2009年5月10日日曜日

穴を掘る

うちのマンションの前に、穴を掘り続けている男の人がいる。たった一人で、毎日毎日、重機も扱いながら、黙々と穴を掘り、掘り続ける、不思議な男。マンションの管理人さんに聞いたら、「3〜4年前からですよ。掘り始めてねえ。何の為か、分からないですよ〜」。今や、深さ2.5 m、奥行きと幅が7m×10mくらい。不思議な高低差もつけながら、大きな箱庭(?)の様にも見え、あてずっぽうのようにも見え・・・
不可解な人物です。でした。

ところが。

昨日、私も穴を掘ってみた。うちの裏庭に。トマトと茄子を植えるため。「初めての野菜作り」という本によると、まず土をちゃんと作ることからしないと駄目、とあって、即興的に植えたのになんとか葉を付けているコリアンダーは奇蹟としか言いようがないぐらい、今回はちゃんと掘った。その為にスコップ(シャベル?)も購入。日よけ対策、日焼け対策も入念に、単調な重労働を開始。私にも備わってるかも知れないこの手のDNAに問いかけながら。
「骨が折れる」とはこの事か。コツを探りながら、手にマメを作らないよう、体勢を変え、右左もスイッチし(私はある範囲で両手効き)黙々と。黙々と。

あれ? 黙々と。 あれ? 
何だろう、この感覚。辞められない。
もう目標の深さと広さには達したはず。しかし、身体が止まらない。
何だろう、誰かに思い当たる。
そう。そうだ、あの男。穴堀り男。
腕が北京ダックのように日焼けして、いつも真剣な顔のあの男。つらいのか、嬉しいのか、なんて表情からは読み取れない顔の男。

単調な反復の動作は、あるリラクゼーションをもたらす。らしい。
ひょんなことから、心身ともに地中の方向に向いて、セミの幼虫に挨拶したり、粘土の匂いにうっとりしたりしたが、私は、明くる日の腰痛を懸念して、なんとか止める事が出来た。彼は私よりずっとずっと強靭な肉体を持っているから、この動作を止めずにいるのだろうか。明日もまた掘り続けるだろう。目標は塗り替えられ、どんどん先に先に進んでいく。誰も止められない気迫の顔。

幸か不幸か。。。

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