2010年8月28日土曜日

ソウルフルソウル

アジア・インプロビゼーション・アート・エクスチェンジ(AIAE)が始まった。

ソウル市内だが、南西の端で、やや開発が遅れた地域なのか昭和の町工場地帯といった雰囲気の街、ムレ。
そこに、ソウル市がおよそ半年前にアーティスの為に建設したアートセンターがあり、レジデンスしながらパフォーマンススペースでワークが出来る。一見、とても恵まれた条件。そして確かに、恵まれている。
が、なにか不自然な違和感を拭えない。
結局、行政がいかにも”整った”施設を作ってやった、という偉そうな感じが見え見えな館内。つまり、使い勝手が悪いのである。実際に使う人の気持ちに立っていない。お金の使い方が間違っているんだなあ・・・。手厳しく表現すれば、「すかたん」。
2年前の前回は、工場地帯の奥深くの、元は売春宿か、という風情の簡易宿泊所に泊まった。オモニがとても可愛らしく、言葉が通じないのに、最後の日には花束を買って贈ったくらい気持ちよく過ごせた。(勿論、排水の悪いシャワーにはがっかりしたが)
今回のアートセンターは、「全てがあるはず」からスタートしているから、マイナスのイメージが強く、前回の売春宿は、「あれば儲けもん」から始まったから、プラスが積まれていった。そういうことなんだ。
でも、大きな要素は、「人の気持ちの繋がり方」。これはあるかないかで大きな差。旅行者って敏感なのよね。


レジデンスのメンバーは、アジアというには、広過ぎ、フランス、南アフリカ、マダガスカルを含め、韓国、台湾、日本が主要参加国。
今日は、ダンサー10人、ミュージシャン2人。日本勢の私たちふたりがラボをリードした。オーガナイザーの狙いでもある、「東西各国がお互いに学び合うこと」、からすれば、今日は大いに日本人の特質、特長を発揮出来たと思う。
シンプルな事を、シンプルな構成で積み上げ、向う先にはゆとりがあって善し悪しの判断だけではなくて素晴らしい。というようなコメントを受けた。そりゃそうさ〜。具体的には、「強いソロこそ、コラボレーションの決め手(主張と協調)」「space is the place(動きと静止で奏でるシンフォニー)」なんちゃんって、な内容で進める。とても良かった。

南アフリカとマダガスカルから参加しているアーティスト、モケチ(男性)とガビ(女性)が、見掛けはすっかり私たちとはほど遠いのに、一緒に踊り、語ると、非常に近いものを感じる。インプロビゼーションだからこそ繋がれる人の縁、その早さと深さ。このダンスを選んできた自分の運に感謝する。


韓国料理は、さすがにガッツがある。フィンランドでの「やさし〜い」食事、良くも悪くも「平坦な」料理に比べると、出汁が効いて、火山噴火のごとく煮えたぎり、その上に真っ赤なスパイス。黙ってても並ぶ前菜の数々と、勝手にお代わりが出される食べ放題システム。
モケチは既に4キロ太ったと言った。やばい。唐辛子ダイエットではないのか!
確かに昨日から食費以外にはほとんど出費は無く、エンゲル係数100の毎日。
明日から計画的な食事をしよう。アイダホで日焼けし、ソウルで肥満していたら、帰国しても誰だか解ってもらえないし・・・。

2010年8月26日木曜日

レイ!!!


ECITEが終了して、70名ほどの舞友とも徐々に別れ、日本人二人は現在フィンランドからソウルへの旅の途中。間もなく、また別のプロジェクトに突入する。

いろいろ考え、ある意味、久々に悩んだ。
「人間」、人の間にいることの素晴らしさと難しさ。自分の場合、20代後半くらいまでは、自分のパーソナリティーの確立に悩む時間が多かった。そして今、まだまだおばはんの貫禄が身に付いていないので、ひょろひょろする事がある。それでも、面の皮は厚くなりつつあり、それほど「自分とは何ぞや・・・」的に悩まなくはなっている。
今回の人の集まり(ECITE)では、自分自身を自分から決めていくよりも、周りが自分を確立してくれる事も多くあり、「あ〜、そうですよね、私ってこうなんですね」と感謝に至る。それは、各国の人々が集まり、あーだこーだと物事を進めて行く時に必要な要素でもあると感じた。だが、それで良いのか。
を宿題にして、そろそろ頭をアジアに切り替えて行こうと思う。


その前に、このフィンランドでやはり一番強く思った事。

タイトルの「レイ!」
このおっさん、流石、の一言。
ジャムで最終日にやっとお手合わせ出来た。
予測の付かなさ度合いは、ぴか一で、様々なパターンを覆してくれる。それは今回、コンタクト・インプロについて自分が突き当たった疑問や違和感をおおいに払拭してくれた。
しかも、明るくよく笑っている。
するすると静かに動いている。
8歳のフィリックスの良いお父さんをしている。
スウェーデン人の奥さん、カテリーナと仲良く幸せそうである。

沙漠の中のオアシス、とまでは言わないけれど、ほっとする存在。
ちょうど、会場に横たわる大きな湖のように、静かで超軟らかい水がいつまでもいつまでも動き続けている感じ。

レイ・チャンと、セバスチャンのデュオを見た。
セバスチャンとは、アルゼンチン人でスペイン在住、これまたおっさんの代表で、
日本人の間では「カトちゃん」として通用する。(あ、ちなみに、レイは、「いけのめだか」に見える事があるよね)
こちらも、私たちの予測を裏切り続けてくれて愉快。存在が漫画。
で、この二人のデュオは、若いインプロバイザーでは捨てきれない二枚目的なテクニックを、すっかり飛び越えて、かっこわるいことをスーパーかっこいいことに仕上げてしまう。もう最高なデュオでした。
見たいでしょ。
ビデオ撮りました。いつかね。


現在、ミュンヘン空港。お腹をすかせたしょうちゃんがクレープを手にニコニコ戻ってきました。美味しいものにありつく能力も人一倍な事を、この旅でも発揮してます。流石。

という間に、ソウルまで来ました。
だいぶ地球を回ってきた。ここでまた10日間のインプロイベント。気持ちをキムチで引き締めますっ!!

2010年8月23日月曜日

2010夏、

旅に出ている。
出る理由は、たくさんあった。しかし、旅が始まると、その理由付けは簡単に効力を失い、逆にそれが足枷にならないように自由な気持ちを保とうとしている。

心が、どのくらい動くのか。
昔の旅と、今回の旅で比べるものはその辺りかもしれない。

東京から始まり、アイダホ、ニューヨーク、ヘルシンキ、ソウル、と、東へ東へと地球を一周する旅程。
旅の道連れ、しょうちゃんはカメラ3台携えての野望の旅でもある。

今は、ヘルシンキから電車とバスで小2時間のKisakeskusで行なわれているコンタクト・インプロビゼーションのイベントに参加中。
ヨーロッパをはじめ、アメリカやイスラエル、ブラジルなどから講師レベルのインプロバイザーが集っての催しだ。およそ70名の参加で、自発的にいなければ何も収穫がないようなシステム。
森の中にゆったりと作られたスポーツ施設で、宿泊も食事も全てが整っている。

初めてのフィンランド。
その清潔さもさることながら、フィニッシュの使うジョークが自分のジョークの傾向と似ている事に、密かにほくそ笑む日々。


ここまでの旅をダイジェスト。

アイダホは、ポテトしか浮かばなかった脳みそに、「地球の表層筋」のような大地のうねりは、本当に新鮮な驚きだった。
沙漠色の大きな丘は、季節ごとに表情を変えていくらしく、とても珍しくて美しい。家々は平屋のくせに広々とした間取りで冷蔵庫は3つ、そして必ず自前の畑と巨大なバーベキューセットがある。(プールまである家も珍しくない・・・)

マイケルの家族に会う。彼の成り立ちが大きく頷ける家族だ。お父さん以外は、ずっとしゃべり続けられる成分を持っている。
マイケルの兄、トムはピアニストでパイプオルガン奏者。ビブラホン奏者を加え、ダンサー4人と、教会でパフォーマンスを行なった。
200名を越える観客が集まり、彼らの人脈の凄さに驚きを隠せない。めったに即興のダンスパフォーマンスを見る事がない観客たちは、相当、驚いたようで、その驚きを拍手と賛辞で表現してくれた。
が、喜ぶのは早かった。マイケルが出演直前に足首の故障。しょうちゃんは公演中に腰をギクッ!と一発。神様の前で踊るにはいささか信心が足りなかったか・・・・

なかなか飛ばない飛行機のお陰で、NY到着は朝の6時。
久々のNYで、まず思うのは、人間の心と身体の醜さ。街の汚さそして臭さ。
大きな都会であることの、どうしようもない要素なのか、とにかく気分がネガティブに向かい始める。その事を食い止めるには、自分も人間を落とすか、馴染むしか無く、馴染む勇気や、避ける財力がなかったから15年前にNYに住む事を止めた。
今回は1日半の観光客だから、全てを受け入れてジャッジしないで楽しもう。この街の匂いも、喧噪も、衛生的でない事も、全てが懐かしい。これらは全て、パワーなんだ、と。

尊敬するニューヨーカーであり、もはやむしろ「日系人」、尚子さんが教えるジャイロキネシスのクラスを受けて、背骨が嬉しそうに伸びた。フルフルしている。このお陰で大西洋を渡る飛行はとても助かった。

初めての国、フィンランドに到着する。その前に飛行機はデンマークに降りるが、あまりの接続時間のなさに、腰痛のしょうちゃんをせかせて、コペンハーゲン空港を1キロくらい一気に走って駆け抜けた。北欧デザインの粋をゆっくり楽しむどころではない。

さて、フィンランド。
ECITEの行なわれているこの片田舎は、なんと言っても、その自然が凄過ぎ。
湖畔に広がる美しく、素朴な施設は、それぞれの活動に集中しやすい為の配慮がなされているが、私達にとっては、二度と来れないかもしれない贅沢なロケーション。
踊る事を忘れ、
森を見ては、「ほ〜〜〜」、
湖を見ても「ひぇ〜〜〜〜〜」、
サウナに入っても「ふはぁぁ〜〜〜〜」。
感嘆詞が足りない、愛でるボキャブラリーが足りない、日本語って不自由。


昔の旅に比べて、皆の喋る英語が分かってきた分、自分の中に準備出来る表現方法がいかに足りないかを痛感し、無言で終わってしまう時間もある。
国際感覚、と一言で言っても様々だが、自分にとっては、「気の利いた事を、言葉少なく、ドンピシャなタイミングでグサッと差し込む」事が出来れば、結構、国際人である、と思っている。

ここで行なわれるコンタクト・インプロビゼーションは、特に風変わりでもないけれど、当たり前に、接触系、リフト系、うっとり系、技術系が多い。この人たちの中にいると、いかにコンタクト・インプロが自分から遠いものであるかが分かる。日本人であることか、年齢的に既に上半分に属する事か、海外イベント参加が久しぶりな事など、言い訳(?)はあるが、本当はそんな事ではなく、自分自身が、コンタクト・インプロバイザーではないのだ、という事。
だからどうしなきゃ、とは思わないが、そんな自分をここにもしっかり置ける人間でありたいと考えている。

踊っていますよ。
様々なアプローチで。
ガツンとしたものはまだないけれど、じわりと心は動いている。